2021年11月10日付、Vientiane Timesの記事によると、
「ラオス政府は、乾季の電力不足に対応するため、太陽光発電、風力発電、石炭火力発電を開発し、エネルギー源の多様化を図ることを宣言した」とのことです。
原文:「Govt pledges to diversify energy sources to minimise imports」
先日、「 J&Cによるラオスの電気料金の上昇についての考察 」にて、ラオスの発電状況についての記事を紹介しましたが、その記事内でも言及されていた、”乾季の電力不足”という問題について、発電方法の多様化によって、問題解決を図るという旨の内容となっています。
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記事によると、
「2020年の時点で、ラオスには82のエネルギー源があり、その発電容量の合計は10,000MWを超えている。そのうち、80.4パーセントが水力発電、18.6パーセントが石炭火力発電所によるもの」であり、「ラオスで消費される電力の約91.49%は水力発電所によるもの」とのことです。
エネルギー鉱業大臣によると、
「2021年から2025年にかけて、1,807MWの発電を計画しており、その内訳は水力が57%、石炭火力が19%、太陽光が24%となっている」とのことで、
「2030年までに、ラオスはさらに5,559MWの電力を生産することが計画されており、そのうち77.59%は水力発電で、残りは太陽光発電、風力発電、石炭火力発電となる予定」
「太陽光発電は10,000~15,000MW、風力発電は100,000MW程度を想定しているという。」
同じく、エネルギー鉱業大臣の発言として、
「石炭火力での発電量を増やしたい最大の理由は、逆輸入電力を最小限に抑え、乾季の電力不足に対応するため」と紹介しており、
今年初めに大臣がVientiane Timesに話した内容として、
「セコン県に2つの石炭火力発電所が計画されていることを明らかにした。これらの発電所は2025年に稼働し、カンボジアへの送電を開始する」と言った内容も紹介している。
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これまで、ラオスは豊富な水資源を利用して、基本的に水力発電に頼ってきた訳ですが、先日のダム事故の件や、メコン川上流のダムによる放流量の制限の問題などもあり、これ以上のダム建設について、ネガティブな意見も出ていました。
ただ、ラオスとしては、水力発電という、環境にやさしい発電方法を採用することで、温室効果ガスの排出権取引により排出権を売却するなど有利な面も維持してきており、今後、国内の発電量を増加させる場合でも、同じく環境にやさしい、風力や太陽光による発電を推進するものと思われていましたが、今回、エネルギー鉱業大臣による「石炭火力による発電量を増やしたい」旨の発言が出ました。
「 J&Cによるラオスの電気料金の上昇についての考察 」でも紹介しましたが、新たな発電所への投資は、ラオス電力公社ではなく、基本的に商業ベースのプロジェクトが行っていますので、利益を得られるプロジェクトでなければ投資は行われないということになります。
そういった面を考慮すれば、乾季の電力不足という問題を迅速に解決する方法として、風力や太陽光による発電よりは、やはり石炭火力による発電が選択されるということは理解できます。
同時に、今後の見通しとして、2030年までに実際に計画されている発電量としては、依然、水力発電が80%弱と大半を占めていますが、ラオスのポテンシャルとして想定している、風力発電と太陽光発電による発電量がかなり大きいということも分かりました。実際に計画中のプロジェクトもあるようですが、実際に風力発電と太陽光発電で想定している発電量を作ることが出来るとしたら、石炭による火力発電を増やさなくとも、電気量を賄える可能性が大きく、期待したいところです。
個人的には、今後、ラオスの進む方向として、東南アジアで一番の環境立国を目指して欲しいという希望がありますので、出来ることなら、これ以上、石炭火力による発電が増加するよりも、(もちろん、風力や太陽光による発電にも、土地利用などの問題があることは理解していますが)風力や太陽光での発電による持続可能な発展を実現するための、いい方法はないものかと考えてしまいます。
(2021年11月29日 一部追記)