2012年12月6日付のThe Laotian Timesの記事によると、12月3日、チャンパサック県パクソン郡の38Km村にあるコーヒー農園で、不発弾の処理作業をしていた3名の男性が死亡し、2名が負傷したそうです。
また、2012年12月9日付のVientiane Timeの記事でも、更に詳しい情報が伝えられており、死亡した3名と負傷した2名は、UXO Laoの調査チームのメンバーで、通常の調査活動と処理作業をしている最中に起きた事故だったようです。
原文:
Laotian Times「 UXO Kills Three, Injures Two During Clearance Operation in Southern Laos 」
Vientiane Times 「 Eleven die, 44 injured in UXO accidents during 2021 」
この2つの記事によると、ラオス国内で、2021年中に不発弾による事故が31件発生しており、11人が死亡、44人が負傷しました。また、労働社会福祉省の担当局長によると、コロナの影響で、一部の現場での作業が中断しており、不発弾の除去率が低下しているため、2021年は事故による死傷者数が増加したと伝えています。
ラオス当局の報告によると、インドシナ戦争中の1965年から1973年にかけて、アメリカは約200万トンの爆弾をラオスに投下しており、そのうち2億7千万個はクラスター爆弾で、その約30%は爆発しませんでした。そして、クラスター爆弾の多くは山間部や河川、森林などに投下されたため、除去が困難で、まだ全体の1%しか除去されていません。
不発弾で汚染された土地の総面積は不明ですが、87,000平方キロメートル近くになるとの推定もあり、現在も、フアパン、ルアンパバン、シエンクアン、カムアン、サワナケット、サラワン、チャンパサック、セコン、アッタプーの各県で除去作業が行われています。
不発弾関連の事故の多くは、農作業中に土を耕した際に、埋まっていた爆弾に触れて爆発したり、子供がクラスター爆弾を見つけて遊んでしまい、それが原因で爆発する事故もあるため、UXO Laoのスタッフのみならず、一般の農民が犠牲となることもあります。
ラオスには、不発弾が処理されていないために利用できない土地が未だ多くあり、農民は、危険と分かっていても、農作業をするために、不発弾の除去がされていない土地を耕すということが珍しくありません。
ラオス政府も、そのことを認識しており、貧しい農村地域の社会的・経済的発展のためにも、優先的に処理を進める地域などを設定して、処理作業を進めることにしていますが、現実的には、かなり時間がかかる作業であり、また危険を伴う作業であるため、今後も相当の時間を要するのが実情です。
今回、事故のあった場所は、パクセーからパクソンの街中へ向かう途中にある村で、普段からよく通る道沿いにあります。
幹線道路やその周辺は、基本的に不発弾の処理が確認されていますが、幹線道路から脇道に入った先の村や田畑、森林には、まだ多くの不発弾が残っています。
コーヒー農園も、会社が運営するコーヒー農園であれば、通常はコーヒーの木を植える前に確認しますし、大規模な農園を持つコーヒー会社では、こういう事態に備えて、不発弾を処理するチームを抱えていることもあります。
しかし、パクソン地域では、一般の農家も自分の家の敷地内にコーヒーの木を植えていることが多く、そのような場合には、不発弾が残っていることもあります。
ラオス国内には、今後処理を続けても、全てを処理するには100年以上かかると言われるほどの不発弾が残っているという現実を、頭では理解していても、普段から、そのような危険な場所に頻繁に出入りする訳ではないので、このような痛ましい事故が起こって、改めて、この現実を思い出します。
ちなみに、森林や人気のない地域に入り込まない限りは、旅行者や一般の市民が、通常の行動範囲内で行き来するような場所で不発弾が爆発するような事故が起きている訳ではありません。
ラオスに来ると自体が危険だということではありませんので、誤解のなきように、念のため、申し添えておきます。
※「UXO Lao」は「the Lao National Unexploded Ordnance Programme (ラオス国家不発弾プログラム)」のことで、ラオス全土の不発弾処理を行っている機関です。
UXO Lao: https://www.uxolao.org/