2022年2月16日付の「The Laotian Times」の記事によると、最後の1頭とみられていた「メコン川イルカ(イラワジイルカ)」が死亡したとのことです。
The Laotian Times: Last Irrawaddy Dolphin Dies in Waters Between Cambodia and Laos
カンボジアの漁業保護局によると、川イルカは、ラオスとカンボジアの国境に近い、カンボジアのStung Treng州の川岸で死んでいるのが発見されたということで、同州の野生生物保護局の担当者は、「この1頭の川イルカが1か月以上前から調子を崩していたことは認識していたが、専門的な設備や訓練を有していないため、保護することが困難だった」と述べたということです。
記事には「川イルカが病気にかかっていたところで、漁網に絡まり、傷を負って、死亡した可能性がある」と書かれています。
このラオスとカンボジアとの国境付近に生息するメコン川イルカは減少の一途を辿っており、2016年には、繁殖をするためのペアの個体数が少なすぎるとして、WWF(世界自然保護基金)によって「機能的な絶滅(functional extinct)」が宣言されていました。
そのため、「この1頭の死亡によって、ラオス国内においてメコン川イルカは絶滅したということになる」と記事は伝えています。
また、「WWF Laos」は、この件について、2022年2月17日のFBに写真と共に情報をアップしており、「WWF」のウェブサイトでも詳細を報じています。
WWF LaosのFB記事: https://www.facebook.com/wwflaosoffice/posts/4150471408389203
「WWF Laos」及び「WWF」の発表した内容によると、カンボジアとラオスの国境付近で2022年2月15日に死亡が確認されたイルカは、25歳のオスのイルカで、死後3日程度経過していたのことです。
2016年時点でラオス国内には川イルカが3頭しか生存していないとされ、「機能的な絶滅」と宣言されていました。そして、2021年半ばに2頭の死亡が確認されており、今回の個体の死亡はラオス国内での絶滅を意味する可能性が高いということです。
ちなみに、メコン川のカンボジア国内側には、2020年に実施された調査で、89頭の川イルカが生存していると推定されており、現在は個体数が安定しているが、依然として深刻な状況であることには変わりがないとのことです。
また、WWFアジア太平洋地域ディレクターは、メコン川イルカの個体数の減少の原因について、「水力発電ダムの建設による川の流れの乱れや魚の減少、刺し網による溺死、電気を使った魚釣りや乱獲といった有害な漁法の使用など、複数の脅威が要因となっている」と述べています。
さらに、WWFは「カンボジアとラオス両国の政府や地方自治体、河川沿いのコミュニティと協力して、このメコン川の象徴である川イルカやその他の重要な種の持続可能な未来を確保するために、引き続き尽力していく」としており、「十分な注意と資源、そして持続的な保護活動によって、これらの種やその他の象徴的な種の回復はまだ可能である」とも言っています。
ラオス国内の川イルカが絶滅した可能性が高いことは、非常に残念で、悲しいことですが、カンボジア側では、ある程度の保護が成功し、現在は安定した個体数を維持しているということですので、いつか、メコン川のラオス国内側にも川イルカが戻って来てくれることを、心から願っています。
そして、いつか、川イルカがラオス国内側に戻って来てくれる時のために、ラオス政府や地方自治体は、今回のことを教訓として、川イルカが生存できる環境を整備して欲しいと思います。
私がシーパンドンで最後に川イルカを自分の目で見たのは、2021年4月のことでした。
その時の様子など、ご興味のある方は、下記のnote記事をご覧下さい。
Dolphin in Mekong River|haklao
https://note.com/haklao/n/n988dfaa640d6