2023年8月21日付の「Vientiane Times」及び8月18日付の「The Laotian Times」の記事によると、政府は、2023年10月からの最低賃金の値上げについて合意したということです。
「Vientiane Times」の記事: Minimum wage increase set for October
「The Laotian Times」の記事: Laos to Increase Minimum Wage for Workers in October
記事の内容によると、ラオス政府は7月の月例閣議後、最低賃金の引き上げを決定し、10月1日より実施されると発表しました。これによって、2023年10月から月額の最低賃金が現在の130万kipから160万kipに引き上げることになりました。
ラオスの最低賃金に関しては、今年の5月にも120万kipから130万kipに引き上げられていました。この5月の値上げの実施は、2022年に決定されていたもので、産業界への影響も考慮して、2022年8月に110万kipから120万kip、2023年5月に120万kipから130万kipという2段階での引き上げとなっていました。
参照:2023年5月1日 「 2023年5月から最低賃金が130万KIPに値上げ 」
上記の記事でも触れているように、前回の最低賃金引上げの際には、ラオス国内の物価の上昇を鑑みて、更なる値上げについての調査・検討を行い、2023年第3四半期に報告されるということになっていました。今回の値上げは、この内容を反映したもので、産業界からの懸念が示されていたものの、国民の生活を考慮した結果、妥当と判断された、ということのようです。
ちなみに、今回の最低賃金値上げは民間部門の労働者に適用されるもので、両記事の中では、公務員の給料について、「現在、月額150~200万kipとなっている公務員の賃上げの可能性について、今回の政府からの発表では触れられていない」ということが、わざわざ言及されています。
また、記事では、「労働社会福祉省の統計によると、現在50万人以上のラオス人が海外で働いている」と述べられており、今回のラオス政府の決定には、昨今のラオス国内の物価上昇やkip安によって、タイを始めとする海外での雇用を求めるラオス人が増加しているという背景も影響していると考えられます。
ただ、両記事では、昨年から3回に渡って最低賃金の値上げが実施されているものの、現在の物価上昇によるラス国民の生活費の高騰には追い付いておらず、まだ不十分であるため、更なる値上げが必要ということも書かれています。
コロナ禍以降続いているkip安に伴う物価の上昇に対して、ラオス政府としても、様々な対策を実施してきているものの、あまり大きな改善は見られず、そのうち安定するかと思っていましたが、現在でもkip安は継続しています。2023年5月の値上げの際の記事では、「月額150万KIP程度までの値上げは許容されてもいいのではないかと思われます」と書きましたが、やはり、現状を見ると、今回の160万kipへの値上げくらいでは、タイへの労働者の流出を食い止めるのは難しいように感じます。
ラオスの産業界や安い労働職を求めてラオスに進出してきている外国企業にとっては、kip安による輸入原材料費の高騰などもある中で、最低賃金の値上げの影響は大きいと思いますが、現実問題として、ラオス政府としては、更なる値上げを検討することが求められています。